
《第3楽章》
ごあいさつ /監修者:西除闇(にし・じょあん)プロフィール / コーナー説明/ 会期 / 謝辞
特別コーナー: 音楽マンガとしての「迷走王ボーダー」
◆壁ケース
第3楽章:バイオリン、オペラ、無音の音、クラシック、他

《バイオリン》
No.01
まみあな四重奏団
槇村さとる
*連載
《展示品》集英社 週刊マーガレット 1988年6号(7/20)

【監修者解説】
音楽一家の四兄弟は全員が弦楽器奏者。クラシックの枠に収まらない型破りな兄や、天才肌の双子の弟に囲まれて主人公の花梨はすくすくと育ちますが、実は両親は子供たちに隠している、彼女たちにまつわる出生の秘密があるのでした。家族愛と音楽の自由が織りなす、心温まる物語。
No.02
ハーメルンのバイオリン弾き
渡辺道明
*連載
《展示品》エニックス 月刊少年ガンガン 1991年4月号(創刊号)

【監修者解説】
勇者ハーメルがバイオリンを武器に敵と戦うファンタジーバトル。ドラゴンクエスト的世界観を下敷きにしながらも、音楽を奏でることで敵を倒す切り口が当時の少年マンガとして珍しく、『月刊少年ガンガン』の初期代表作となりました。技や登場人物の名前に音楽用語が使われるのもみどころです。
No.03
花音(かのん)
さいとうちほ
*連載
《展示品》小学館 プチコミック 1995年7月号

【監修者解説】
本当の父親を突きとめるために、生まれ育ったモンゴルを離れ日本でバイオリニストになる道を選んだ少女の物語。音楽家×親探しという組み合わせはまるで戦後の貸本少女マンガを思わせる昭和的モチーフですが、次々におこるドラマチックな展開がテンポよく流れ、最後には衝撃的な結末が待っています。
No.04
おしゃべりなアマデウス
武内昌美
*連載
《展示品》小学館 少女コミック 1995年10号(5/5)

【監修者解説】
事故で両親を亡くした天才バイオリン少女と、兄妹同然に育った新進気鋭のバイオリニストとのラブロマンス。本作の連載がはじまった1995年は同じく小学館のプチコミックで「花音」も連載開始。また、1990年代半ばはバイオリンをモチーフに用いたマンガが散見されます。
No.05
金色のコルダ
呉由姫(くれゆき)
*連載
《展示品》白泉社 月刊LaLa 2003年12月号

【監修者解説】
同名の女性向け恋愛シミュレーションゲームをコミカライズしたメディアミックス作品。主人公は楽器経験の無い普通科の女子高生。ある日、妖精から魔法のバイオリンを授かって音楽科のコンクールに出るところから物語ははじまりますが、魔法の力で弾いている内に徐々に音楽の楽しさに目覚めていきます。
《歌手(オペラ)》
No.06
ばらの騎士
津雲(つくも)むつみ
*読切
《展示品》集英社 OFFICE YOU 1991年4月号

【監修者解説】
オペラファンである作者は、オペラが出てくる作品を数多く発表しました。主人公は日本人オペラ歌手として海外で成功を収めた女性です。その業の深い人生が「ばらの騎士」の舞台を通してドラマチックに描かれます。ベテラン歌手の世代交代への複雑な心理や、本番で歌詞を忘れるハプニングなどは、舞台芸術ならではのリアリティです。
No.07
DIVA(ディーヴァ)
小野弥夢(おのひろむ)
*連載
《展示品》講談社 別冊フレンド 1988年4月号

【監修者解説】
死んだ父よりも舞台を選んだ世界的オペラ歌手の母。母に対する強い憎しみと呪縛、そして受け継いだ歌の才能の間で少女の人生は揺れ動き、迷い、それでも音楽の素晴らしさに抗えず、やがて母と同じオペラ歌手の道を歩みます。それにしてもオペラマンガに出てくる女性はみな業が深いです。
No.08
ソルフェージュ
よしながふみ
*読切シリーズ連載
《展示品》芳文社 花音 1997年12月号

【監修者解説】
オペラマンガの主役はほとんど女性ですが、本作は珍しく男性が主人公です。音楽教師の主人公は男子高生に声楽を教え、のちに男子高生はオペラ歌手になります。スキャンダラスな彼らの恋模様とは対照的に歌唱シーンは静謐で、短編ながら作者のエッセンスが詰まっている作品です。
《無音の音》
No.09
翼ある者
大和和紀(やまとわき)
*3回連載
《展示品》講談社 週刊少女フレンド 1980年11号(6/5)

【監修者解説】
音を出さずに音を作り出す、指揮者というプレイヤーの特殊性を華麗に表現したワンシーンです。黒い背景の中で白く浮かび上がる手の動き。そこからどんな音楽が紡ぎだされているのか、作者の繊細で美しい絵が読者に想像力の翼を与えます。
No.10
TO-Y(トーイ)
上條淳士(かみじょうあつし)
*連載
《展示品》小学館 週刊少年サンデー 1987年11号(2/25)

【監修者解説】
無音で音楽を表現したマンガとして、真っ先にあげられる作品といえば「TO-Y」です。こちらの見開きでは頁の中央に1人ずつ人物だけが描かれ、短いモノローグ2行以外は効果線も背景もほぼありません。なのに、音が聴こえてくるようです。余白で音楽を表現するこの手法はその後のマンガ家たちに大きな影響を与えました。
No.11
Kiss xxxx(キス)
楠本まき
*連載
《展示品》集英社 マーガレット 1989年2号(1/10)

【監修者解説】
作者のもち味である繊細な描線と余白の描写が合わさり、音楽シーンにスタイリッシュな印象を与えます。さらにこの頁では向かって左上のコマから主人公のボーカルのみをクローズアップしネガポジ反転させることで、時が一瞬止まったような刹那的な効果を出しています。
No.12
3-THREE-(スリー)
惣領冬実
*連載
《展示品》小学館 少女コミック 1991年22号(11/4)

【監修者解説】
無音の音楽描写を集めたところ、描線の細いマンガ家の作品が多く並びました。とりわけ繊細な画風の少女マンガ家が、ロックなどの激しい音楽を表現するために、逆説的な余白の描写にたどり着くことは必然なのかもしれません。本作も、主人公が抑えていた感情を歌で爆発させるシーンが印象的に描かれています。
No.13
EXIT(エグジット)
藤田貴美
*連載
《展示品》白泉社 花とゆめ 1989年19号(9/20)

【監修者解説】
バンドブーム最盛期の1989年に連載開始後、掲載誌が数度変わりながらも断続的に発表を続け、現在も未だ完結を待たれているバンドマンガです。背景に描かれているのは飛び散る汗とみられるわずかな点描のみですが、ライブの躍動感にあふれています。登場するバンドのモデルはBOØWY。
No.14
ヴァイオリニスト
水城せとな(苗字・みずしろ)
*連載
《展示品》青磁ビブロス 月刊マガジンビーボーイ 1994年4月号

【監修者解説】
個人的見解ですが、無音の音楽表現はBLと相性がよいです。本作は音大生ふたりが主人公。このシーンは恋人の知られざる才能を目の当たりにする場面ですが、主人公のショックの大きさが伝わるようです。無音であることによってバイオリンの音のみならずこの後の悲劇的な展開まで想像させられます。
《描き文字・擬音》
No.15
無頼男(ブレーメン)
梅澤春人(うめざわはると)
*連載
《展示品》集英社 週刊少年ジャンプ 2000年29号(7/3)

【監修者解説】
不良がロックバンドを結成し、ケンカに明け暮れながらロックの神を目指す音楽バトルマンガですが、注目すべきは演奏シーンです。彼らの歌うロックは全編を通してデジタル記号で表記されています。ロックの神ゆえ、魂の叫びを言葉で縛り付けられないのでしょう。
No.16
ヘビメタ甲子園
みやすのんき
*連載
《展示品》小学館 週刊少年サンデー 1990年53号(12/19)

【監修者解説】
野球少年が死んだ父の遺したヘビメタカフェ再建のために奮闘するギャグマンガ。野球部監督のマサオは実は伝説のベーシストで、ベースで「バッカヤロォ~」と言っていますが、スラップ奏法(親指で叩くようにベースを弾く奏法)なので通常のベースよりも重く鈍い質感のオノマトペになっています。
No.17
GO AHEAD!!
江口寿史(ひさし)
*読切
《展示品》集英社 週刊少年ジャンプ 1980年17号(4/28)

【監修者解説】
静かな華道部の余白を埋め尽くす、筆の描き文字。音楽をマンガで表現する際にオノマトペはよく使われますが、「絵の表現」の中に混ざる「文字」は本質的には異物です。そのことを逆手に取り、本来静寂であるべき空間を侵犯する「騒音」としてロックを描く時、無粋な筆文字のオノマトペはとてもマッチしています。
No.18
リトル・コンサート
筒井百々子(ももこ)
*読切
《展示品》小学館 プチフラワー 1985年4月号

【監修者解説】
オノマトペのみで描かれた「これぞ純然たる音楽マンガ」と言うべき作品です。楽器ごとに多彩で丁寧な擬音を使用していることはもちろん、作品内の音楽を実際に体感できるように、作者自作の楽譜を載せる徹底ぶり。マンガで音楽を奏でることの難しさと、それに挑む作者の音楽への深い愛が感じられる名作です。
No.19
BLOW UP!(ブロウ・アップ)
細野不二彦
*連載
《展示品》小学館 ビッグコミックスペリオール 1988年21号(11/1)

【監修者解説】
フェスへの出演拒否をしていた往年の名ドラマーが、日本の若者のセッションに触発されて手元のグラスを叩きだすシーンです。音階の無い打音、しかも叩いているのは食器にもかかわらず、低音から高音まで細かく分けられたオノマトペが使用されていて、オノマトペの多様性が一コマの中で端的に表れています。
No.20
ピューと吹く!ジャガー
うすた京介
*連載
《展示品》集英社 週刊少年ジャンプ 2000年52号(12/11)

【監修者解説】
タイトルに「ピュー」と使われていますが、ジャガーさんのたて笛は実にいろんな音が出ます。複雑な和音も出せます。和音のオノマトペは「ジャーン」「チャラーン」など紋切り型になりがちですが、ジャガーさんのたて笛はそんなオノマトペの常識を難なく飛び越え、異次元の音を奏でます。
《その他》
No.21
雪のティアラ
陸奥A子(むつえーこ)
*読切
《展示品》集英社 りぼん 1982年12月号

【監修者解説】
ある日一人の旅人が迷い込んだのは、楽器(音符)で会話をする村でした。彼はそこで一人の女性に恋をし、覚えたてのアコーディオンで会話を試みます。旅人が発するモノローグ以外の言葉はすべて音符マーク。ここでの音符マークは、マンガにおける音楽の表現手法であると同時に、言語そのものでもあります。
No.22
ものまね鳥シンフォニー
筒井百々子(ももこ)
*連載
《展示品》東京三世社 Crescent (クレッセント) 1988年vol. 4(10/10)

【監修者解説】
放射能汚染された地球から避難するために作られた月面都市で、手の動かないキャロラインは念動力を使って楽器を演奏しようとします。この終末的な月の世界で音楽は、生きていく上で最重要な概念として描かれます。手で音楽を奏でることも、空気を伝って音楽を聴くことも、当たり前のことではないのです。
No.23
アタゴオルは猫の森
ますむらひろし
*連載
《展示品》メディアファクトリー コミックフラッパー 2000年5月号

【監修者解説】
作者にとってのイーハトーブ(理想郷)であるアタゴオルの世界では、猫も人もよく歌いよく踊ります。そして展示ページの例のようにみたことのない楽器が現れ、聴いたことのない音を奏でます。本展では音楽マンガの一部をジャンルに分けて展示していますが、アタゴオルシリーズほど音楽に満ちていながらどの音楽ジャンルにも当てはまらないマンガは無いでしょう。
No.24
陽はまた昇る
吾妻ひでお
*読切
《展示品》東京おとなクラブ 東京おとなクラブ 1982年 vol.1(7/7創刊号)

【監修者解説】
フキダシの重なりで輪唱を表現した冒頭は、それだけで注目に値します。続くページでは現実と妄想が混濁した世界の中で、絵・吹き出し・台詞が重なり合って独特の音響効果となっていきます。やがて重なった文字は判読できなくなり、その中に作者の苦悩の吐露が見てとれます。酒と音楽でなんとか日々を紛らわしている様子がまるでディレイ(遅延音)効果をかけて聴こえてくるようです。
《クラシック》
No.25
オルフェウスの窓
池田理代子
*連載
《展示品》集英社 月刊セブンティーン 1981年6月号

【監修者解説】
「オルフェウスの窓」とは、主人公たちが通う音楽学校にある、悲恋の言い伝えが残る古い窓のこと。彼らはこの窓のもとに出会い、共に音楽家を志しますが、やがて第一次世界大戦やロシア革命といった激動の時代が彼らを飲み込みます。音楽の神に導かれた主人公たちが織り成す壮大な歴史ロマン。
No.26
のだめカンタービレ
二ノ宮知子(にのみやともこ)
*連載
《展示品》講談社 Kiss 2002年12号(6/25)

【監修者解説】
エリート指揮者と変人の天才ピアノ少女の成長を軸に描かれるクラシックラブコメティ。言わずと知れた大ヒット作であり、クラシック音楽ブームを起こしただけでなく、音楽マンガ史においても「のだめ以前」「のだめ以後」でその作品数が大きく変化する、エポックメイキング的な作品です。
No.27
青のオーケストラ
阿久井真(あくいまこと)
*連載
《展示品》小学館 裏少年サンデーコミックス 1巻 2017年7月24日刊

【監修者解説】
子供の頃からソロで弾いてきた天才バイオリン少年・青野は、高校でオーケストラ部と出会うことによってはじめて音を合わせる喜びに触れます。恋や友情を通して本音でぶつかることで互いに高め合っていく部員たち。音楽も人間も、ソロとセッションは全く別物であることを教えてくれる作品です。
《クラシック・現代音楽》
No.28
ミュジコフィリア
さそうあきら
*連載
《展示品》双葉社 漫画アクション 2011年12号(6/21)

【監修者解説】
「神童」「マエストロ」に続く、作者の音楽マンガとしての集大成的な作品といえます。「神童」で生まれた、音楽における原初的な歓びの描写は本作を経てより洗練され、前衛的な現代音楽の領域に深く分け入り、音楽マンガとして前人未踏の表現にまで到達しました。
《歌手》
No.29
帰らざる氷河
美内すずえ
*読切
《展示品》集英社 別冊マーガレット 1975年1月号

【監修者解説】
国王の隠し子として生まれたために祖国を追われた少女。彼女は国王への復讐のために泥水をすするように生き延び、やがて世界的歌手となって国王に謁見(えっけん)します。狂気的ですらある天賦(てんぷ)の才や貧困描写、少女の才能に惚れる敏腕プロデューサーの存在など、「ガラスの仮面」にも共通するモチーフにも注目です。
No.30
THE STAR(ザ・スター)
島崎譲(しまざきゆずる)
*連載
《展示品》講談社 週刊少年マガジン 1990年8号(2/7)

【監修者解説】
本作は主人公の雄也が神業を次々と繰り出して世界的俳優になるサクセスストーリーですが、なりゆきで歌手になった際もチート級の才能をみせます。こちらはライバルの久保利男へのアンコールが鳴りやまない中、2,3分息継ぎせず声を出し続けることによって観客の目を自分に向けることに成功するシーンです。
No.31
部長 島耕作
弘兼憲史
*連載
《展示品》講談社 モーニング 2000年17号(4/6)

【監修者解説】
島耕作シリーズにも音楽編が存在します。派閥争いを回避するためレコード会社に出向した島は、ニューヨークでダイヤの原石ナンシーをみつけ、日本で歌手としてプロデュースし大ヒットさせます。この話は2000年に連載されており、1998年にデビューした宇多田ヒカルがモデルになっていると思われます。
No.32
星恋華(ほしれんげ)
佐伯かよの
*連載
《展示品》主婦と生活社 星恋華 ※雑誌版 1987年vol.1(3/23)

【監修者解説】
弱小プロダクションに飛ばされた敏腕マネージャーが再起の為にみつけた逸材は15歳の少女。しかし彼女の歌には動物たちを引き寄せてしまう力がありました。歌うたびに大量のコウモリやネズミが集まるので歌手にはなれないと言う彼女。歌声の凄まじさが動物の群れで表現されるという稀有な例です。