アーカイブ マンガに耳を澄まして - 音楽マンガ展 -

《第2楽章》



ごあいさつ /監修者:西除闇(にし・じょあん)プロフィール / コーナー説明/ 会期 / 謝辞

※第1楽章「ごあいさつ ・監修者:西除闇(にし・じょあん)プロフィール ・コーナー説明・ 会期 ・ 謝辞」と同じ



特別コーナー: 音楽マンガとしての「迷走王ボーダー」

◆Sケース展示

第1楽章解説と同じ


◆中央・覗き込みケース展示

第1楽章解説と同じ



◆壁ケース

第2楽章:ロック、既存曲の使用、オリジナルソング、他

《ロック》

No.01
ファイヤー!

水野英子(ひでこ)
*連載
《展示品》集英社 週刊セブンティーン 1969年6号(2/18)


【監修者解説】
このロックマンガの金字塔は、女性の手から生まれました。情熱的な絵柄、そしてテーマは反体制としてのロック。それまでいつもたくさんのファンレターが届いていた水野作品ですが、本作連載の最初はシンと鳴りを潜め、ほどなく堰(せき)を切ったように性別年齢を問わぬ読者からたくさんのメッセージが届く、反響の大きな作品となりました。音楽(ロック)の精神性を正面から取りあつかった本作の凄みは、今なお色褪(あ)せることがありません。

No.02
上を下へのロックンロール

みかみなち
*読切
《展示品》白泉社 LaLa 1977年3月号


【監修者解説】
1970年代、少女マンガ家たちは国内外のロックミュージシャンに夢中になり、彼らをモデルにした作品をこぞって描きました。本作はクイーンやKISSをモデルにし、BL的要素も含んだコメディです。単行本には実録短編も同時収録されており、作者のロック愛が伝わってきます。

No.03
おんなのこ物語

森脇真末味 (ますみ)
*連載
《展示品》小学館 プチコミック 1982年5月号


【監修者解説】
少女マンガの題材としてのロックには眉目秀麗な男性キャラが欠かせません。しかし本作の登場人物は皆骨太で汗臭く、引用アーティストもじゃがたらや憂歌団など、他作品と一線を画しています。それでも主人公の繊細な心情を描いた本作は紛れもなく少女マンガです。クライマックスのじゃがたら「でも・デモ・DEMO」の歌唱シーンは、原曲とあわせてぜひ聴いて欲しいです。

No.04
愛してナイト

多田かおる
*連載
《展示品》集英社 別冊マーガレット 1981年8月号


【監修者解説】
大阪のお好み焼き屋の娘とロックバンドメンバーとの恋物語。ライブシーンには当時関西ロックシーンで活躍していた複数バンドの歌詞が使われ、作者自身ものちに歌詞が登場するバンドメンバーと結婚しました。実際の熱気を肌で感じていた作者ならではの高揚感が作品に反映されています。

No.05
疾風伝説 特攻(ぶっこみ)の拓

所十三 原作・佐木飛朗斗(ひろと)
*連載
《展示品》講談社 週刊少年マガジン 1994年23号(5/25)


【監修者解説】
今やヤンキーのネットミームとして有名な「特攻の拓」ですが、原作者の趣味が高じてロックマンガと化していた時期がありました。暴走族メンバーの一人である天羽時貞(あもうときさだ)がお気に入りのギターやエフェクターを熱く語り、果ては古刹(こさつ)で血まみれの大規模ライブを決行。観衆はその時、空に舞う龍を見たのです。

No.06
BECK

ハロルド作石
*連載
《展示品》講談社 月刊少年マガジン 2008年1月号


【監修者解説】
「ファイヤー!」が火をつけたロックマンガの系譜の中、20世紀末に登場した「BECK」は、その長く続いた人気をはじめ様々な点において画期的な作品となりました。また2000年前後は「NANA」や「のだめカンタービレ」などの連載が続けてはじまり、音楽マンガが全体を通して成熟期を迎えたといえます。

No.07
ハデー・ヘンドリックス物語

漫☆画太郎
*全2回
《展示品》集英社 週刊ヤングジャンプ 2001年1号(1/1)


【監修者解説】
タイトルからしてあからさまなパロディであり、全編を通して作者お得意のふざけ倒したギャグマンガなのですが、どこか強烈なメッセージ性を感じます。ロックマンガとしてどうこうではなく、漫☆画太郎という存在そのものがロックなのでは、と頭を抱えてしまいます。

No.08
モッシュピット

今野涼
*連載
《展示品》小学館 週刊ビッグコミックスピリッツ 2015年6号(1/22)


【監修者解説】
格闘技最強の高校生が、本当に強い男になるためにロックの世界へ足を踏み入れます。最前列から見上げたような急角度のアングル、音質ごとに大胆に描き分ける擬音、まるでプレイヤーの残像のような白い線。ロックを好きでないと描けない臨場感溢れる演奏シーンに注目です。



《既存曲》

No.09
バイエルンの天使

たらさわみち
*シリーズ連載
《展示品》小学館 週刊少女コミック 1978年33号(8/6)
【登場曲】いと尊きわがイエスは見失われぬ 聖歌(推定)


【監修者解説】
戦後、日本でおきた少年合唱団ブームにより、少女マンガ誌でも海外の少年合唱団がグラビアでたびたび紹介されました。教会音楽の和訳文献が少ないためここでの曲を特定しきれませんでしたが、今以上に情報の少なかった連載当時にこの訳詞が用いられたことからも、作者の熱意がうかがえます。南ドイツのテルツ少年合唱団をモデルに描かれた、少年合唱団ものを代表する作品です。

No.10
俺節

土田世紀(せいき)
*連載
《展示品》小学館 ビッグコミックスピリッツ 1991年1・2合併号(1/1,1/7)
【登場曲】風雪ながれ旅 北島三郎


【監修者解説】
本作では実在の演歌がほぼ毎回劇中に挿入されます。それはまるでひと昔前、レーザーディスク時代のカラオケ映像を観ているような印象を読者に与えます。もがきながら必死に生きる主人公たちを表現するには、作者が聴き込んだであろう数多くの演歌の言葉の力が必要だったのでしょう。

No.11
組曲“愛”

里中満智子
*連載
《展示品》講談社 Fortnightly mimi 1986年5号(3/14)
【登場曲】しのぶれど 色に出でにけりわが恋は ものや思うと人の問うまで 平兼盛


【監修者解説】
昭和のヒットメーカーである作曲家とアイドルの恋物語。作中には恋愛を扱った10首の有名な和歌に現代の曲をつけた歌が、作曲家の野心作として登場します。日本の史劇を得意とする作者・里中満智子は、これまでも歴史上の恋愛を沢山描き、恋の和歌を紹介してきました。そんな里中にとっても、現代の芸能界を舞台に和歌と恋愛の絡みを扱った本作は野心的試みだったのではないでしょうか。

No.12
ひとり模様

市東亮子(しとうりょうこ)
*全2回
《展示品》秋田書店 ボニータ 1983年5月号
【登場曲】心もよう 井上陽水


【監修者解説】
同級生たちと弾き語りをするシーンです。ささやかな幸せのひとコマですが、「心もよう」は青春時代との暗い決別を歌った曲です。笑顔の背景に挿入された歌詞がこの後おきる事件への予兆となっています。フォークソングが少女マンガのモチーフとして使用された例です。

No.13
歌謡漫画大全集より 六本木心中

弘兼憲史
*読切シリーズ
《展示品》講談社 週刊ヤングマガジン 1985年5号 (3/4)
【登場曲】六本木心中 アン・ルイス


【監修者解説】
マンガ家が、好きな歌謡曲を独自の解釈で描く短編シリーズです。マンガで既存の音楽をモチーフにする際は、クラシックや海外のロックが多数派であった当時、昭和歌謡曲に絞っているのが特徴的なシリーズです。この後平成に入ると『週刊少年マガジン』で「GLAY物語」「LUNA SEA物語」等を集中連載するなど、講談社では日本のアーティストを中心に紹介する企画が目を引きます。

No.14
JOKER

野村あきこ
*連載
《展示品》講談社 なかよし 1998年3月号
【登場曲】うれしい!たのしい!大好き! DREAMS COME TRUE


【監修者解説】
1990年代はCD売上数が最盛期を迎え、カラオケブームの影響もあり、マンガ内で登場人物が実在のJ-POPを歌うシーンが頻出するようになりました。本作で主人公が歌っているドリカムは'90年代の代表的アーティスト。当時の女子高生は全員カラオケでドリカムを歌っていたと言っても過言ではないでしょう。

No.15
歌って!ナナちゃん

奥村真理子
*連載
《展示品》小学館 歌って!ナナちゃん ※雑誌版 1985年1月10日
【登場曲】瞳はダイアモンド 松田聖子


【監修者解説】
ほぼ毎回、実在のアイドルが登場する「アイドルスターコミックス」。握手会が一般的ではなかった時代のアイドルは、テレビでしか会えない遠い存在でした。どこにでもいる普通の女の子がもち前の幸運で次々と実在のスターたちとなかよくなることができる本作は、女子たちの夢そのものだったでしょう。

No.16
完全犯罪 ―フェアリー

萩尾望都
*全3回
《展示品》小学館 プチフラワー 1988年 4月号
【登場曲】夜にもつれて 甲斐よしひろ


【監修者解説】
全編甲斐バンドおよび甲斐よしひろの曲をバックに展開するミュージカルコミック。萩尾望都作品というとクラシックのイメージが強いため、当時このコラボレーションはファンにはとても意外でした。もともと萩尾が甲斐よしひろファンだったことから始まり、計30曲を単行本1冊分のストーリーにまとめあげる手腕からは、萩尾の、ファンとしての熱量の高さと作家としての圧倒的な力量が伝わってきます。

No.17
ジジメタルジャケット

泉昌之
*連載
《展示品》双葉社 漫画アクション増刊BROTHER 1989年12号(11/2)
【登場曲】Start Me Up ローリング・ストーンズ


【監修者解説】
おじいさんたちのロックバンドであるため、洋楽をコピーするにも英語の発音ができず全てカタカナ読み。しかしそれが逆に妙な迫力を生んでいます。ちなみに実際の歌詞は「If you start me up,I'll never stop.You make a grown man cry」。

No.18
1,2,3・愛!

富樫(とがし)じゅん
*連載
《展示品》集英社 別冊マーガレット 1986年4月号
【曲】Kuchi・Beniの罠 シルバー・フォックス


【監修者解説】
女子プロ選手で結成されたバンドのライブシーン。「Kuchi・Beniの罠」はここではマンガ内のバンドのオリジナル曲として登場しますが、使われているのは実在の楽曲です。こうした例はあまりありません。原曲の情報が少なく、どのような経緯でこうなったかは不明ですが、当時のメディアミックス的実験のひとつなのかもしれません。



《オリジナルソング》

No.19
ミモザ館でつかまえて

大島弓子
*読切
《展示品》集英社 週刊マーガレット 1973年12号(3/18)


【監修者解説】
大島弓子の作風であるポエティックなモノローグが、本作では登場人物たち率いるバンドの楽曲詞として用いられています。大島作の音楽ものでは、他には「ラッカー行進曲」などユニークなオリジナルソングが登場する「ヒー・ヒズ・ヒム」が知られています。

No.20
白いトロイカ

水野英子
*連載
《展示品》集英社 週刊マーガレット1964年52号 (12/20)


【監修者解説】
後世の歴史ロマンを描く少女マンガに大きな影響をあたえた本作ですが、音楽マンガとしても大切な作品です。主人公は歌手を目指す少女。「ファイヤー!」連載開始5年前の1964年、水野は音楽をモチーフにしたマンガをすでに描いていたのです。主人公の歌う子守唄は、物語の重要な鍵を握っています。

No.21
遠い日の草笛

神奈幸子
*読切
《展示品》講談社 別冊少女フレンド 1973年6月号


【監修者解説】
神奈幸子作品には音楽家を扱ったもの、とりわけ芸能界のモチーフが多数描かれています。本作では貧しい家庭に生まれた主人公が歌手として大成し富豪の娘と婚約しますが、弾き語りで歌うのは幼なじみへの愛。ゴシップに飲み込まれながらも歌の中では純潔を願う心がストレートに歌詞で表現されています。

No.22
絶愛-1989-

尾崎南
*連載
《展示品》集英社 マーガレット 1989年22号 (11/5)


【監修者解説】
男性同士の破滅的で激しい恋愛ストーリー。「絶愛」はファンに熱狂的に支持されました。主人公は南條晃司という破天荒なミュージシャンですが、その人気からのちに南條名義でビデオやCDなどが数枚リリースされたほどです。ほとんどの作詞は尾崎南が手がけています。マンガの中のオリジナルソングが本物の音楽となった例です。

No.23
デトロイト・メタル・シティ

若杉公徳
*連載
《展示品》白泉社 ヤングアニマル 2005年9号(5/13)


【監修者解説】
本当は内気で弱い青年が素顔を隠して歌うデスメタルは、とにかく直球で暴力的です。しかしそれが逆に人気を呼び、実際のCDもリリースされました。作者はさらに本作の連載終了後に今度は「ライミングマン」というラップマンガを連載。マンガ内音楽でオリジナルの歌詞を書いた量では若杉公徳の右に出る者はいないかもしれません。

No.24
ピアニシモでささやいて

石塚夢見
*連載
《展示品》小学館 プチコミック 1987年6月号


【監修者解説】
「勝鬨(かちどき)をあげろ!」見開きのページを引き裂くような、迫力のフレーズ。まったくピアニシモではないし、少女マンガのヒロインが歌う歌詞としても規格外です。読者を問答無用で観客席に座らせるこの熱量は、正に、音楽マンガならではのものではないでしょうか。



《ロック》

No.25
SHIORI EXPERIENCE ~ジミなわたしとヘンなおじさん~

長田悠幸(おさだゆうこう)×町田一八(かずや)
*連載
《展示品》スクウエア・エニックス 月刊ビッグガンガン 2013年11号(11/23)


【監修者解説】
ロックマンガの現在進行形がここにあります。ロック史上の伝説の人物たちを憑依という形で登場させ、演奏の根源的な喜び、創作と表現の苦しみ、マンガにおける音楽表現の多様性など、音楽にまつわるあらゆる事象を詰め込んでいます。音楽好き、マンガ好きにはぜひ読んで欲しい作品です。

No.26
ギヴン

キヅナツキ
*連載
《展示品》新書館 Chéri+(シェリプラス) 2016年19号(フユ 2月号)


【監修者解説】
ロックをBL というフィルターで濾過(ろか)すると唯一無二の世界観が顔を出しました。バンドメンバーのそれぞれが密かに抱えている苦悩が彼らを楽曲の創作へと駆り立て、ライブという形で昇華します。そして彼らを固く結びつけるのもまたロックでしかありえないのです。

No.27
ギターショップ・ロージー

髙橋ツトム
*連載
《展示品》小学館 ビッグコミック増刊号 2020年6月17日号


【監修者解説】
ロック少年はとにかく楽器を語るのが好きです。本作は中でもギターのみに焦点を当て、修理屋の元に集まるギターたちから聴こえてくる悲喜こもごものドラマを一話完結形式で描きます。自身でもバンド活動を行う作者ならではのヴィンテージギターの描写が愛情たっぷりです。

No.28
ぼっち・ざ・ろっく!

はまじあき
*連載
《展示品》まんがタイムきららMAX 2022年12月号


【監修者解説】
 日常系4コマ×女子高生バンドのモチーフで、「けいおん!」同様にアニメ化された人気作です。
ここでは4コママンガにおける音表現にも注目します。作中では重要な演奏シーンが描かれる時、一瞬だけ通常マンガのコマ割に変わることがあります。これは音楽ものに限らず近年の4コマによく見られる手法で、突発的な定型コマの消失が4コマにリズムの変化を与え、新たな表現を生み出しています。



《近年のジャンル》
【DJ】

No.29
パリピ孔明

原作:四葉タト、漫画:小川亮
*連載
《展示品》講談社 週刊ヤングマガジン 2021年52号(12/6)


【監修者解説】
 かつての天才軍師が戦のノウハウを携えて一人の無名歌手をプロデュースする物語。DJ プレイやラッパーたちのMC バトルに路上ゲリラライブなど、理解力の高い諸葛孔明の視点を通して様々な現代日本のクラブシーンが描かれます。

No.30
バジーノイズ

むつき潤
*連載
《展示品》小学館 ビッグスピリッツコミックス1巻 2018年9月17日刊


【監修者解説】
「音楽はタダで聴くもの」「音楽は家の中で一人で楽しめばいい」。現代の音楽観を反映したリアルな若者像がそこにはありますが、孤独を好む才能は偶然ネットに配信されることにより否応なく他者と繋(つな)がってしまいます。音楽と社会は切り離し可能か、という問いがここにはあります。

【ボカロP】

No.31
茜色のコンポーザー(=アカネノネ)

矢田恵梨子
*連載
《展示品》小学館 月刊!スピリッツ 2022年5月号


【監修者解説】
ボーカロイドを活用して楽曲制作をする「ボカロP」を主人公にした音楽マンガ。ある日、自分の曲の「歌ってみた動画」をあげている女性を発見しますが、彼女は三重の女子高生でした。顔出しNGやDiscordなどネットとPCありきの音楽制作シーンが見どころです。展示品は連載第1回掲載誌。『ビッグコミックスピリッツ』への雑誌移籍にともないタイトルを変更しました。

【ラップ】

No.32
スーパースターを唄って。

薄場圭
*連載
《展示品》小学館 ビッグコミックス1巻 2023年11月4日刊


【監修者解説】
音楽がいくらデジタルに漂白されても、この世界は相変わらずノイズだらけで、汚れと悪臭の中で生きていることにハッと気付かされます。現代の詩人たちはヘッドホンをかぶりポケットのスマホを握りしめながら、自分はここにいると叫ぶチャンスを静かに狙っているのです。




◆壁展示

1期解説と同じ